入れ歯を初めて使用する人にとって、最初の違和感や不安はつきものです。しかし、適切な対策を取ることで、入れ歯に徐々に慣れ、快適に使用できるようになります。今回は、入れ歯に慣れるまでの期間や慣れない原因、そして快適に使うためのコツを詳しく解説します。入れ歯を安心して使い続けるためのポイントを押さえましょう。
1.入れ歯に慣れるまでの期間はどのくらい?
入れ歯に慣れるまでの期間は個人差がありますが、一般的には2週間から1ヶ月程度かかることが多いです。
最初の数日間から1週間は、食事や会話の際に違和感があることが多く、装着時の異物感や圧迫感を強く感じることがあります。
通常は1週間から2週間程度で徐々に入れ歯に慣れてきて、違和感が和らぎます。
1〜2ヶ月後には、入れ歯に慣れてくる方が多いでしょう。
2.入れ歯を装着した際に感じる主な違和感
入れ歯を初めて装着した際、多くの人が感じる違和感にはいくつかの共通点があります。
通常、これらの違和感は時間とともに軽減していきますが、あらかじめ知っておくことも大切です。
①歯茎の痛み
入れ歯は、金属製のばね(クラスプ)やプラスチック製の義歯床(プレート)などによって構成されています。これらが複雑な形状をしているため、歯ぐきを圧迫したり摩擦を引き起こしたりすることがあります。特に新しく入れ歯を装着した際や、調整が十分でない場合には、歯ぐきが痛むことがあります。
②噛む時の違和感
入れ歯は天然の歯と異なり、噛む感覚や力の入り加減が変わるため、食事をする際に違和感が生じやすくなります。特に固い食べ物や繊維質のものを噛むときには、入れ歯がしっかりとフィットしていないように感じることがあります。
③発音がしにくい
新しく入れ歯を装着すると、発音に影響が出ることがあります。特に「サ行」や「タ行」など、舌や歯の位置が重要な発音において違和感が出やすくなります。これは、入れ歯が入ることでお口の中の広さが変わるため、舌の動きに変化があることが原因です。ただし、発音の練習を重ねることで徐々に改善し、最終的にはスムーズに会話できるようになるでしょう。
④嘔吐反射が起こる
入れ歯のプレート部分が口腔内の奥まで広がっていると、オエッとなる嘔吐反射を引き起こすことがあります。これは、特に上顎の入れ歯で多く見られる症状です。食事や会話の際に嘔吐反射が強く出る場合、入れ歯の調整が必要になることがあります。
3.入れ歯に慣れるために日常生活でできる対処法
入れ歯に慣れるためには、正しい対処法を取り入れることが大切です。ここでは、入れ歯の装着に対する不安や不快感を軽減し、快適に使い続けるための具体的な方法を紹介します。
①定期的な調整を受ける
入れ歯は、初期段階では実際のお口の中の形や動きに完全にはフィットしていないことが多く、使いながらの微調整が必要です。また、経年変化でも歯ぐきや顎の形が少しずつ変化するため、定期的に歯科医師による入れ歯の調整を受けることで、快適な装着感を保つことができます。痛みや違和感がある場合は、我慢せず早めに歯科医院を受診するようにしましょう。
②食事は柔らかいものから始める
初めて入れ歯を装着した場合、食事には注意が必要です。最初は柔らかい食べ物(例えば、スープや豆腐、ヨーグルトなど)から始め、徐々に硬い食材や噛みごたえのあるものに挑戦しましょう。食事を小さく切ったり、一口ずつゆっくりと噛んだりすることで、入れ歯の違和感を少しずつ減らし、自然な咀嚼感覚に慣れることができます。
③発音練習を行う
入れ歯に慣れるためには、発音の練習も有効です。特に初期段階では、入れ歯が原因で舌の動きに違和感が生じることがありますが、発音練習を繰り返すことで改善が期待できます。鏡の前で口の動きを確認しながら「サ行」や「タ行」の発音練習を行うことで、入れ歯を装着した際の発音をスムーズに行いやすくなります。また、ゆっくり話すことを意識し、徐々に速度を上げると効果的です。
④入れ歯専用のケア用品を使用する
入れ歯を長く快適に使うためには、入れ歯専用の洗浄剤やブラシを使用して、毎日丁寧に清掃することが大切です。入れ歯の表面に食べかすや細菌が付着すると、口臭や感染症の原因となり、さらなる違和感を引き起こすことがあります。正しいケア習慣を身につけることで、入れ歯のフィット感を維持し、快適な装着が可能となります。
⑤入れ歯を外して休む時間を設ける
長時間入れ歯を装着し続けると、歯ぐきや顎に負担がかかり、痛みや違和感があることがあります。そのため、就寝時には入れ歯を外して支える歯や歯ぐきを休ませることが重要です。入れ歯を外すことで歯ぐきの圧迫が解消され、翌日の装着感が向上します。ただし、お口の中の状況によっては入れ歯を外さずに就寝したほうが良い場合もあるため、担当の歯科医師に相談することをお勧めします。
4.長く入れ歯を使うためのコツ
入れ歯に慣れるまでは時間がかかるかもしれませんが、慣れた後はいくつかの工夫やコツを取り入れることで、より長く使用できるようになります。ここでは、入れ歯を長期間快適に使い続けるための具体的なコツを紹介します。
①毎日のケアを徹底する
入れ歯は、自分の歯と同じように丁寧なケアが必要です。毎日、専用のブラシで入れ歯を清掃し、洗浄剤に浸けることで、細菌の繁殖や汚れの付着を防ぐことができます。清潔な入れ歯を保つことで、口臭や口内炎のリスクを減らし、快適な装着感が持続します。
②適切なフィット感を保つ
入れ歯は使用しているうちに、歯ぐきや顎の形が変わることでフィット感が変わることがあります。フィット感が悪くなると、入れ歯が動いて痛みや違和感が生じる原因になります。そのため、定期的に歯科医師のもとで入れ歯の調整を行い、常に適切なフィット感を保つことが重要です。痛みや不快感がる場合は、早めに歯科医師に相談しましょう。
③バランスの取れた咀嚼を心がける
入れ歯で食事をする際には、左右どちらかだけなど偏った噛み方ではなく、お口全体を使って均等に噛むことが大切です。片側だけで噛むと入れ歯が傾いてしまい、痛みや不具合の原因になることがあります。初めのうちは柔らかい食品や小さく切った食材から始めて、徐々に普通の食材に移行することで、入れ歯に負担をかけずに咀嚼を行うことができます。
④話し方を工夫する
入れ歯を装着していると、最初は発音に違和感が出る場合がありますが、少しずつ練習することで自然な話し方を取り戻すことができます。初めのうちは、鏡の前で発音練習をしたり、声に出して本を読んだりなどしてお口の動きを確認しましょう。また、ゆっくりと話すことを意識すると入れ歯がずれにくく、スムーズに会話ができるようになります。
入れ歯に慣れるまでには時間がかかりますが、適切なケアと対応を続けることで、徐々に違和感が軽減し快適に使えるようになります。日々の清掃や定期的な調整、柔らかい食事から始めるなど、無理のないペースで取り組むことが重要です。不安や疑問があれば早めに歯科医師に相談し、サポートを受けながら快適な生活を目指しましょう。
入れ歯のお悩みは、渋谷 宮益坂の歯医者 みさき歯科医院にご相談ください。
監修:
見﨑 徹
経歴:
日本大学歯学部(昭和50年卒)
日本大学大学院歯学研究科修了(口腔外科学専攻)
日本大学歯学部口腔外科学教室
日本大学歯学部歯科麻酔学講座 所属
国立がんセンター麻酔科 所属
独立行政法人労働者健康福祉機構関東労災病院麻酔科 所属
日本大学 歯学部歯科麻酔学 准教授(2016年3月退任)
日本大学歯学部付属歯科病院歯科麻酔科 科長(2016年3月退任)